かるとばこ

カルトのブログ

2022年好きなアルバム・好きな声優楽曲9選

カルトです。

普段はSpotifyで音楽を聴いたり、dアニメストアでアニメを見たり、インターネットラジオステーション<音泉>でラジオを聴いたりして暮らしています。

DJもしています。

www.mixcloud.com

2022年は個人的にはDJでいろんな現場(声優楽曲、アニソン、電子音楽etc...)に出させていただいたり、県外にも呼んでいただいたり、活動や交流の幅が広がった一年でした。皆様に感謝…
リスナーとしては、CDに飽きてきたこともあってあまり買い漁らず、Bandcampで電子音楽掘る機会が増えました。でも、あんまり聴けなかったなあ…というのが正直なところ。。

それでも音楽シーンは国内・海外ともにバリ面白かったです。そんな2022年が終わるので、良かったアルバムと声優楽曲を紹介します。いずれも順不同です。


2022年好きなアルバム9選

 

Cremation Lily - Dreams Drenched In Static

open.spotify.com
2020年代初頭の潮流として、聴取感覚と手法の両面からシューゲイザーが再発見されてきたと感じてます。前者は、オルタナティブ電子音楽における参照で、アンビエントグリッチ、ノイズ、リバーブシューゲイザーの揺らめきと漸近し、イーサリアルかつ苛烈な表現を生み出しています。手法としては、5th wave emoの文脈で、エモとシューゲイザーが相互参照する他、DAW上だけ製作された、ナマ感のない過剰なシューゲイズなど新しい質感が生まれてきました(完全に褒めています、Parannoulとかなんだかんだ好き…)。そんな認識のもと、個人的にもシューゲイザーを感じる音楽を聴いたり、シューゲイズDJユニットとして勝手に他人の曲にリバーブをかけて流したりしていた2022年でした。

www.mixcloud.com
シューゲイザーを感じる作品群の中で、最も驚いた作品がロンドン拠点の作家、Cremation Lilyの8枚目のアルバムでした。もともとposh isolation周辺とも交流のあるアンダーグラウンドなノイズ、アンビエント作家で、年々手札が増えてきている印象はありましたが、本作はシューゲイザーはもとより、アンビエントブラックメタル、インダストリアル、ポストクラブが導入され、調和し、1作品として見事に成立しています。一貫して歌われる絶望と鬱、諦念が切実に、美しく響きます。Vaporwave以降のイーサリアル感覚を表現するのにブラックメタルやブラックゲイズ、シューゲイザーがここまでハマるとは本当に驚かされました。同様の感覚を纏う今年の作品では、The Ephemeron Loop - Psychonautic Escapismも挙げられますが、アルバムとしての完成度は本作を推したいです。特に#7 Selflessまでのあまりに映画的な展開は必聴。鬱屈とした夜に何度も聴き返してしまうであろう一枚です。

水仙サカナ(CV.奥野香耶), 北島とわ, 淡乃晶, あおのなち - 【終末百合音声】イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜【CV:奥野香耶

www.dlsite.com

「声」と向き合い続け、デバイスやメディアに革新が起き続けているアートシーンが音声作品周辺です。眠りや癒しのためのASMRや、アダルトな18禁音声が中心と思われがち(というか事実そう)ですが、オルタナティブな作品が出続けています。それは声自体へのエフェクトであったり、録音方法であったり、環境音へのアプローチであったり、趣向を凝らしたシナリオであったり、多種多様です。2022年現在、それらの革新の最前線を提示した作品がこのイルミラージュ・ソーダでした。

www.youtube.com
教師であるあなたは、夏の教室に女生徒と2人きり。物語はそこから始まります。プールやセミの鳴き声といったモノの音は当然とばかりに自然そのもの、本作はそこに効果的な「音」や「音楽」が組み合わされています。ネタバレになってしまうので必要最低限の言及に留めますが、音楽担当の北島とわ氏の、命を削るような音への執念を感じました。ノイズ、シューゲイザーエレクトロニカの可能性がここでは示されています。そして、シナリオにも驚かされました。音声作品だからこそ体験できる衝撃であり、これまでの音声作品は、そのフォーマットゆえ実現できなかったことを本作は逆手に取って実現しています。また、奥野香耶さん…。私は声優 奥野香耶さんのファンですが、それを差し置いても、この難しい設定を捉え切った演技には称賛を送らざるを得ません。
(プレゼント企画でサインまでいただいてしまいました。家宝にしています。)


ややネタバレ気味のレビューはDLsiteに掲載しているので、関心のある方はご一読および試聴、購入を強く勧めます。

【20%OFF】【終末百合音声】イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜【CV:奥野香耶】 [SukeraSono] レビュー詳細 karutoさんのレビュー | DLsite 同人


Alexander Panos - Nascent

open.spotify.com

音声作品を取り上げたばかりですが、これも「声」の作品であると解釈しています。エレクトロニクスとアコギ、ピアノの断片を継ぎ接ぎして作ったかのように聴こえてしまうかもしれないが、その実、緻密に構成されており、その柔らかく優しいアンビエンスと美しいメロディに身を委ねてしまいます。そこから漏れ出るように聞こえる声は、プリズマイザーやグリッチで加工され、どこまでが声でどこからがシンセなのか見失うほどに脱色されています。ほとんどが言語を失っており、まるで宇宙人から話かけられているかのよう。だからこそ#5 reasonsnotto、#8 Equinoxで聴こえる歌と詞は絶対者と意思疎通ができたかのような、ほとんど宗教的なカタルシスがあり、最終曲re:Turningで爆発します。

あなたと私は通じ合えないということは、互いを知る余白があるということ、今はその幸福を噛みしめたい。そんな気持ちになりました。アニメ『星屑テレパス』の音楽にはぜひAlexander Panosを起用してほしいです。



I want more than a moment
I am all that I’ve been
I want a future
Living in the present, I’ve
Let it all go passing by
Let it all go passing by

#5 reasonsnotto より

天花 -水分補給(Tenka - Hydration)

 

open.spotify.com

小唄や純邦楽のサンプリングとビートで、失われた日本の風景を描き出した『怪談』『小町』『古風』を発表し、高い評価を得た冥丁。その別名義、天花としての本作は、これまでの日本伝統音楽のサンプリングではなく、ノンビートのアンビエントアルバムとなっています。霧の野山を分け入るような、細かな音の粒子が耳に優しい。小枝を踏み、セミの声を聴く。海に潜り、時化の波を聴く。イーサリアルな感覚を持ちつつ、どこからか自然の匂いが漂ってくる感覚は唯一無二です(本作の限定フィジカルにはアロマオイルが付属)。日本のどこかに存在する自然を、バーチャルに解像度高く置き換えたことで、聴き手として身の回りの自然の見え方が変わっていきました。その意味で今年を代表するサイケデリックな聴取体験でした。

loli 主語 - ガチ恋

open.spotify.com

個人的な話で恐縮ですが、私は夏が嫌いです。暑いし、汗をかくし、虫は出るし、セミはうるさいし、雨も降るし、飯も冬の方が美味いし、最悪です。最悪にもかかわらず、世の人々はどこか夏をエンジョイしているように見えるのも最悪です。

フィクションの夏は好きです。広い空、青い海、水着美少女、夕暮れ、夏祭り、浴衣美少女。こんな季節があるのであれば体験してみたいです。そんなフィクションの夏、理想の夏に近づこうとするムーブメントが2022年の夏に流行した「ガチ夏」だったと思います。「本当の夏」をやろうとするのであれば手段は問われない。海に出かけても、アニメを見ても、曲を作ってもいい。自分も夏の概念に囚われてDJmixを作ったりしました。それでも、何かが足りない夏でした。

www.mixcloud.com

そんな2022年夏、7月20日(水)K/A/T/O MASSACRE @FORESTLIMITでloli主語によるガチ恋ライブが行われました。ライブのみならずラブレターの朗読、キスノイズ、、恋の破壊的衝動と切実さが詰まったパフォーマンスは見た者全員に衝撃を与えました。

そこから約1ヶ月後にドロップされた本作は、恋の眩しさ、痛み、孤独感、覚悟が詰め込まれた濃密な13分間になっていました。「たまたま拾ってしまったクラスメイトのラブレターをこっそり読んじゃう感じで歌詞を見ながら聴いてほしい」とご本人は語っていますが、個人的な恋愛経験から書かれていると分かる一方で、普遍的な恋の感情も同時に描かれているとも感じます。実直なメロディー、語りかけるようなボーカル(ボーカロイド)、浮遊し包み込むテクスチャーは、純真な言葉たちをよりビビッドなものにしました。特別な夏、特別な時間は、「君」がいて、「君」への覚悟があってこそ訪れるのかもしれない。恋のきらめきと痛みを思い出す、得難い作品でした。

君への気持ち全て この夏に捧げようと思う
もしいつか君がいなくなっても
何度だって思い出せるように

#1 告白より 

quannnic - kenopsia

open.spotify.com

"kenopsia"とは「普段は人で賑わっているのに、今は廃墟となった場所の不気味な雰囲気」のことを指すらしいです。

www.youtube.com

東京在住の自分は、コロナ禍において、しばしばこの感覚を味わいました。そこにあったはずのノイズ(日常)がないことへの不安と対峙するために、ノイズをどう使うか。多くのミュージシャンが取り組んだ課題だと思います。本作において、quannnicはシューゲイザーと広義のエレクトロポップを土台に、hyperpop以降の音作りを見事に導入しています。音割れの使い方に(良い意味で)品があり、過剰に音をまき散らし続けるのではなく、閉塞感と離人感を与えることに成功しています。今後、quannnicという作家自身、およびこの音作りがどう進化していくのか非常に楽しみである。個人的には1人シューゲイズの先駆者であるKrausの反応が見たいところ。

kurayamisaka - kimi wo omotte iru

open.spotify.com

東京・大井町のバンドがリリースしたコンセプトアルバムです。Youtube公式MVに記載の「あらすじ」は以下の通り。

「私のこと忘れないでね。」春休みも終わりを迎え、松井遥香は進学を期に故郷を離れることとなる。それは同時に、ただ1人の親友である向井あかりとの別れも意味していた。伝え切れたことなんて何ひとつないまま、発車ベルは鳴り響く。

人は誰しも友人と別れる/別れたことがあるでしょう。あなたは松井遥香のことを思う日があるかもしれないし、向井あかりのことを忘れていっている途中かもしれません。本作はまず、2人の別れからの距離感を、簡潔で力強いフレーズで描く歌詞が素晴らしいです。1番と2番の歌詞が同じだったり(#3 seasonsなど)、繰り返しを多用するのは、それだけシンプルで強い歌詞であり、演奏の展開で違う情景が浮かぶだけの余白があるから、だと勝手に思っています。音楽的には、日本の90sオルタナティブロックの影響を感じさせるシューゲイズ一歩手前のノイジーなロックが中心。訥々と歌う女声ボーカルは、感情的になりそうなテーマを扱いながらも、アツすぎず冷めすぎない絶妙な歌いぶりで、アンサンブル全体を引き締めている。#4 last danceのスローチューンもハマっており、今後どんなリリースがされるか楽しみなバンドの筆頭である。

Yung Lain - Like a Fallen Angel

open.spotify.com
Yung Leanじゃなくて岩倉の方のLain。ジャンル的にはDepressive Breakcoreなのでしょうか?Bandcampで"Ambient Breakcore"で検索して出会ったアーティストで、この手のファ〜っとしたBreakcoreを1年通して探していたのですが、やっぱりYung Lain好きだなあ…となり選びました。若干トランスに接近する様子を見せており、そちらがイケてないのが心配(Boys Hotelとのスプリット最悪でした)。2023年もBreakcore周辺オモロいといいなあ〜頼みます!

さよならポニーテール - 夜の出来事

open.spotify.com

去年、ある種の狂騒状態にあったシティポップリバイバルは流石に落ち着きを見せ、ポップミュージックの一つの型として収まったように思います。シティポップで再発見された「軽さ(機能性)と温もりの両面を持った、都市生活者に寄り添うポップス」を今またどうやるのか、というのは難しいお題。オルタナティブR&Bがその地位を担えるかというと、自分には背伸びが必要というか、ちょっとノれないところがあります。
そんな中、さよぽにの新譜はまさにその解を叩き出したんじゃないでしょうか?夜をテーマにした本作では、キリンジ土岐麻子的な成熟したR&B、ファンクがベースで、演奏は洗練されつつもリラックスしていて、いい意味で隙がある。アナログな録音(特にベース!)も素晴らしい。いつも通りのあどけないボーカルが歌うのは、終わった夏、クラスメイト、いなくなった(いなくなる)大切な人、大切な一瞬について。
“8月の熱波 蜃気楼たちのパッセージ”
アルバムがリリースされたのは12月、冬の夜に狂騒の夏(ガチ夏!)を思い起こしながら踊るために本作はあります。今はもう子供でなくなってしまった都市生活者たちは、失った何かを思い起こすためにポップスが必要になる、時がある。こんなにも「シティポップ」をやれているアルバムはそうそうないです。ラストチューン「明日のように君は」で喪失から優しく背中を押してくれる、その手つきの温かさでこの冬も乗り越えられそうです。



好きなアルバム9選は以上です。
それ以外の良かった曲でSpotifyにあったものは以下にまとめています。

open.spotify.com

 

2022年好きな声優楽曲9選

声優楽曲掘り出して4年ほど経ちましたが、今年もオモロリリースたくさんありました。

大西亜玖璃 - ジェリーフィッシュな君へ

open.spotify.com今年度アニソンランキング第2位。声優が歌う歌の面白さに、声の活用方法が一般的な歌手のそれと異なることが挙げられます。それは意識的・無意識的な演技の導入によるところが大きいのですが、例外も存在します。大西さんは『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』の上原歩夢さん、『このヒーラー、めんどくさい』のカーラたむ等、演技でも一定の評価を得ている声優さんですが、今年発表された"ジェリーフィッシュな君へ"と"はじまるウェルカム"における扁平な、全ての感情を奪われたような歌唱は非常に独特です。俊龍作曲の、アップテンポで超ポップに設計された楽曲と相まり、巨大な無を聴いているような気持ちにさせられます。最高です。カップリングではしっとり切ない恋を歌いこなしており、この歌い方しかできない訳では全くないことを補足しておきます。ディレクションが入ったのか、そうであればマルコム・マクラーレンのような音響担当がいることになるが、一体何を狙ったのか… 今後出るアルバムがどうなるのか、とても楽しみです。

遥そら - はちみつと時空旅行。

open.spotify.com異常楽曲などと簡単に言ってしまうのは良くないのですが、初聴時の感想はまさに異常でした。遥そらはアダルトゲームの声優で近年はASMRも発売している方です。本楽曲の構成は以下になります。

まず遥さんのASMRから始まり、右耳左耳のアンビエントと並行(!)し、ワルツが歌われる。その後、またASMRが挿入されるが今度は催眠音声モノのそれで、ここからハイエータス・カイヨーテのような、現代ジャズのようなセッションパートに突入、歌を挟み、徐々にエレクトロポップになって終わる。このように何を言っているのか分からない構成なんですが、一曲に違和感なく押し込められており、恐ろしいったらない。作曲の岩嵜壮志氏は次年度以降も目が離せない作家です。

梅本佑利 - 萌え²少女 

 open.spotify.com

声優現代音楽。声優に喋ってもらったセリフ(「お兄ちゃん!」「いきなりこんなことされても困っちゃいますよ///」など)のwav音源の音程、リズムに合わせて、チェロが同じ音程、リズムを弾くという、言うなればwav音源とチェロの二重奏です。萌え²少女とは、その意味でwavとチェロの「2」でもあります。wavたむとチェロたむ、選べないンゴねえ… 同様の試みはライヒの『ディファレント・トレインズ』などでも見られ、作者も意識しているとのことですが、あちらが電車の音を再現しようとして、かなり成功してしまっているのに対し、萌え²少女のチェロソロ音源を聴いても萌え萌えできません。萌え声の本質とは何なのか、発声する主体(声優さん)に宿るのか。そもそも萌え声自体に萌えエピソードや萌えキャラクターが含まれているわけではないのに萌え萌えできるのはなぜか。声と音に考えを巡らしてしまいました。なお、本作のCVは非公表とのことです。

おにぱんず - 鬼ヤバっ!

open.spotify.com『おにぱん!』終わらないで〜! 素晴らしいアニメだった『おにぱん!』ですが、楽曲も素晴らしかったです。"おにパパパン!パン!"と"鬼ヤバッ!"の2曲とも、中毒性の高いサビとリズムにやられ、クラブでかかるたびに踊り狂っていました。作詞曲:辻村有記先生ありがとう…(伊藤賢先生もありがとう…)

特に"鬼ヤバッ!"はレゲトンを感じるトラックで、BPMを60落としてかければ、アニソン箱以外でもかけれるスタイリッシュな出来。なのにラスサビ転調する超アニソンでもあるのが嬉しいぜ… インストが出なかったためか、soundcloudにremixがあまり上がらなかったのが唯一残念。今からでも遅くないので出してください!

Don’t be Afraid - 伊吹橙真(CV.梶原岳人)、ひゅーい(CV.田丸篤志

open.spotify.com爆踊り楽曲2(ツー)。Aメロで2step、というか4/4 Garage、Bメロでトラップ入れてビルドアップしてサビで4/4になる構成が気持ち良すぎる。声質の異なる男声の絡みもまた良し。今年は男の踊り楽曲が大量にリリースされてありがたかったです。THRIVEのNight DrivingやFAB-ELのSugar&Honey、SwichのRomancing Cruiseなど爆踊りさせていただきました。来年もよろしくお願いいたします!

人生(咖山 喱人 / 神田駅(CV:菊池 幸利),雷電 遊生 / 秋葉原駅(CV:鈴木 裕斗) - +-×÷

open.spotify.com都市生活者を祝福する渋谷系。作詞曲:辻村有記先生ありがとう…2(伊藤賢先生もありがとう…2)
まんまピチカートファイブ「大都会交響楽」のオマージュで本当の笑顔になってしまいました。STATION IDOL LATCHは山手線の各駅の駅員が男性アイドルとして活動しているという設定のコンテンツで、大都会交響楽で称揚される都市生活の舞台そのものです(じゃあ秋葉原駅と神田駅のキャラクターに歌わせるのは…?渋谷駅でやった方が…という野暮はここでは措きます)。これがただのオマージュに留まらないのが、辻村先生なんですよねえ…

目を覚まして 巡る世界に
愛すべき物語 時計仕掛けの夢
運命とは摩訶不思議だと
過去と未来の交差点で
出会い別れが 渦を巻く
ガラパゴス スピード ドラマティック
Yeah yeah

電車・交通機関のネタを入れつつ、猛スピードで過ぎゆく不安定な人々の営みを「愛すべき物語」と肯定してみる手管がよお… STATION IDOL LATCHはイイ曲が多いプロジェクトなので、来年も要チェックです。

湊 大瀬(CV: 日向朔公)- 雪解

open.spotify.com『カリスマ』は2022年に局所的な話題を呼んだキャラクターコンテンツでした。自分は追えていないので、多くは語れないのですが、気になった方はこちらの記事をどうぞ。

omocoro.jp

楽曲は1曲目"カリスマ1週間"がアップされた時から追っています。いい意味で過剰、やかましい楽曲が多いカリスマですが、"雪解"は落ち着いているいい曲だなあ、ぐらいに最初は思っていました。聴き込むほどに凄みが分かってきました。ボーカルは"内罰"のカリスマ、湊 大瀬。ピアノとプリズマイザーのかかったボーカルのサビメロから始まるのですが、声の重ね方だけでなくノイズ、パンを振るシンセといった丁寧な仕事が光ります。その後、プリズマイザーは外され、呟くように独白を重ねます。「聞こえる?」と君に問うパートでは、漏れ出たように「聞こえる?」「ねえ、聞こえる!?」とセリフが左右から囁かれます。次いで、サビに戻ってプリズマイザーがまたONになるのですが、入りとは異なり、「少しだけの痛みを」「大きな跡を」残した君に歌いかけるよう、はっきりと力強く響きます。これは歌唱もそうですし、巧みなコーラスワークの力もあります。James BlakeとBon IverのFall Creek Boys Choir を想起しました。このように編曲、MIXで声を丁寧に扱い、今までの声優楽曲にはなかった、声の魅力を引き出した傑作です。ドラマも聴かないと…

 

結束バンド - フラッシュバッカー

open.spotify.com邦ロック好きでしたか。自分は全然好きじゃなかったです。馬鹿にしてました。ちょっと尖ったバンドやっていると、周りのコピバンやってる大学生は冷ややかな目で見てしまいます。というかそうしないとやっていけない小心者でした。和解できたのはここ数年で、周囲が青春時代に通ってきたロックがよく分からないんです。いや、曲自体は知っていても、実感を持って熱く語れるわけではない。そんな自分でも漫画は楽しく読んでいた『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメ。一体どんなもんやねん!かかってこいや!と思っていましたが、いやあ…完敗です… ストーリー、演出の話もしたいのですが、そういえば年間ベストアルバムとかあげる音楽ブログなのでやめておきます。

結束バンドの音楽は、日本の00s以降のロックバンドの影響を感じる、メロディアスなパンク、エモ、パワーポップが基底にありつつも、メタル早弾き道を通ってきたぼっちちゃんこと後藤ひとりのギターが散りばめられています。「そこ、そんなピロピロ弾く必要ないんだよな〜笑 ぼっちちゃん萌え〜」といった気持ちで聴けます。ですが、"フラッシュバッカー"はぼっちちゃんが抑制を覚え、シューゲイズするギターと泣きのWeezer系ギターソロに泣かされます。そして歌詞がよお、、、アルバム1 曲目"青春コンプレックス"で「暗く狭いのが好きだった」と1行目に書いていた後藤が、「光る朝が 朝があまりに眩しい 眩しいからさ ちょっとさ らしくはない 未来も信じちゃうよ」と書いているわけですよ。結束バンドで、伊地知、山田、喜多、廣井、店長、その他大勢と出会って、後藤が演奏的にも、人間的にもどう成長したかアルバムを通して語られているわけです。自分が今まで通ってこなかった、ロックバンドの成長ストーリーにコロッとやられてしまいました。お見事、降参です。一生語れてしまいますが、最後に長谷川育美さんの歌唱について。ずっと喜多郁代であり、「結束バンドのボーカル」をやれていて素晴らしかったです。番組「長谷川育美・川井田夏海のなんあり」はマジで死ぬほど面白いのでぜひ課金しましょう。

上田麗奈 - アンダンテ

open.spotify.com1st EP『Refrain』は2016年12月に発売された冬の作品、2020年3月に春のアルバム『Empathy』、2021年8月に夏のアルバム『Nebula』、そして2022年10月に秋のアルバム『Atrium』が発売された。この四季を通して、音楽表現とは何か、表現したい自分とは何かを考えてきた、上田さん本人および「チーム上田麗奈」は、最終作において「肯定」をテーマに選びました。声優・上田麗奈が富山から上京し、今に至るまでの道のりを年代ごとに6曲に分け、それぞれの時期を見つめ、肯定していきました。

その中で、"アンダンテ"は他者を肯定しきれず、そんな自身も肯定できない、でもそれではダメだ、と現状を打破していく姿が描かれています。前作『Nebula』では挫折から克服までの過程で、時間をかけて一歩踏み出す姿が描かれていましたが、それとも違う、より他者とコミュニケートしようとする姿勢が絞り出すように歌われています。自身の今と未来も肯定していくために、他者と向き合う、他者にノイズを受ける自分を肯定すること。あれだけ『Refrain』では自分のことを何も語らないような音楽をやっていた上田さんがここまで自身の意思で、開かれた表現をしていることに畏敬の念を抱かずにいられません。次の活動がいつになるか分かりませんが、また上田さんがその美しい声で口ずさむ歌が聴ける日が来ることを気長に待ちたい、その日々を肯定できるものにしていきたいと思っています。


好きな声優楽曲9選は以上です。
それ以外の声優楽曲で聴きどころがあった曲は以下にまとめています。

open.spotify.com



思ったより長くなりすみません!

2023年も楽しく音楽聴いたり聴かなかったりしましょう!では!